会長挨拶
2021年現在、高齢者の増加、現役世代の急減、社会保障費の増加などの社会構造の変化が顕著になりつつあります。そのような中、健康寿命を延伸し、持続可能な社会保障制度を維持するために、腎臓病や糖尿病などの生活習慣病の予防・重症化予防に重点的に取り組むことの重要性が指摘されています。腎臓病重症化予防は、わが国における国家的重要取り組み事項と言っても過言ではありません。
腎臓病の重症化予防を具体的な方策にするために2018年に厚生労働省から腎疾患対策検討会報告書が出され、新規透析導入患者数を2018年までに10%以上減少させる、という具体的な目標が設定されました。その目標達成のためには、①地域における医療提供体制の整備、②普及啓発、③診療水準の向上、④人材育成、⑤研究開発の推進、が必要であると提言されており、これらを達成するためにNPO法人日本腎臓病協会が設立されました。
腎臓病の重症化予防においては、多職種によるチーム医療、そして地域におけるかかりつけ医と専門医との良好な医療連携・病診連携が必須となります。これらを推進し、標準的な慢性腎臓病の保存療法を現場に浸透させることを目的に、日本腎臓病協会では日本腎臓学会、日本腎不全看護学会、日本栄養士会、及び日本腎臓病薬物療法学会と共同で、腎臓病療養指導士制度を立ち上げました。
現在、長野県内には多くの腎臓病療養指導士が誕生し、個々にそれぞれの現場で腎臓病対策に取り組んでもらっておりますが、個々人の限定された活動は腎臓病重症化予防対策全体に大きなインパクトを与えるには至らないのが現状です。しかしながら、長野県内の腎臓病療養指導士や腎臓病療養指導士制度に理解を示す医療者が一堂に会し、腎臓病重症化予防において統一的な目標を立て、多くの腎臓病療養指導士が協力し有機的に機能すれば、より有効な腎臓病対策が行えるようになることが期待されます。そして、その期待を実現するために、2021年5月25日に、「長野県腎臓病療養指導士の会」が長野県透析研究会の傘下に発足しました。
2021年5月25日に第一回の総会が開催され、日本腎臓病協会や長野県透析研究会との連携の観点から、日本腎臓病協会長野県代表であり長野県透析研究会会長である信州大学腎臓内科 上條祐司が本会の会長を兼任することが提案され承認されました。
今後、本会の会員の皆様のご協力を得ながら、腎臓病重症化予防のために様々な方策を打ち出していきたいと考えております。関係各所の皆様におかれましては、何卒ご協力のほどお願い申し上げます。